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鼠黐(ネズミモチ)・唐鼠黐(トウネズミモチ)・黒金黐(クロガネモチ)(2016年7月1日)

◆ だだだだだだだだ。(ドラムロール)だだだだだだだ。ぱしゃーーーん! カモ~ン、レッドスネーク モチモチトリオ!

◆ てなわけで、今日はモチモチトリオ(ネズミモチ・トウネズミモチ・クロガネモチ)の登場です。いつも我々の周りで植え込みや街路樹として見事な脇役に徹しており、かろうじて花と実の時期にちょこっと目につく以外は全く顧みられることのない人たちにスポットライトを当ててみたいと思います。おっ、みんなモチっていう名前ついてるってことは、ワンチャンこれらの木から餅が作れるってか? ブー。モチロン、作れません。ありゃっ? 漢字をよく見てくださいね。「黐」ですよ。「餅」じゃありませんよ。あっ、そこの漢字検定1級を目指したことのあるアナタ。「あ、この木から鳥黐(トリモチ)が採れるのね」と思ったでしょう。すばらしい勘です。

◆ たしかにトリオのうちクロガネモチだけは鳥黐が採れます。しかし他の二人からは鳥黐作れません。 えー、なんで餅も作れず、鳥黐も採れないのにモチなのー? (←「トリモチ」がなんだか分からないあなたはググッてください。)ハイ、それには深い訳があって、実は本日ここにはご登場いただけていないモチノキさんという方がいらっしゃいます。図書館の東(本部棟)側にモコモコッとした樹形の木が立っているのをご存知の方もいらっしゃると思います。あれがモチノキさんです。鳥黐は主にあの方の専売特許なのですな。ネズミモチ・トウネズミモチのお二人はそのモチノキに「似ている」ために、〇〇モチ、××モチと呼ばれているとモノノホンには書いてありました。ちょっとまぎらわしいよね。

◆ あれっ、そんなに似ているのなら、モチノキ本人にも参加してもらって「トリオ」ではなく「カルテット」としてここで紹介すれば? と思うでしょ。ハイ、それにも深ーい訳があって、実はモチノキさんはこれらトリオのメンバーにそんなに似てないんです。何それ、似てるから〇〇モチって呼ばれてるって言ったじゃん。ハイ、言いました。言いましたが、どう見てもソックリとは言えません。むしろトリオのメンバー同士の方がよく似ています。ククノッチの想像ですが、トリオのうち唯一鳥黐の採れるクロガネモチさんも「モチノキ」と呼ばれることがあったのではないでしょうか? 現在正式にモチノキと呼ばれるモチノキさんではなくクロガネモチさんに似ていたのでネズミモチもトウネズミモチさんもモチづけで呼ばれるようになったのではないかと思います。とにかく、今日はそんな似たものモチモチトリオを紹介して、皆さんにぜひ身近な存在として彼らを分かってあげてほしい、そういう思いでコラムを書きたいと思います。

◆ さてトリオのメンバーのうち名前も似ているネズミモチとトウネズミモチ。この二人は姿かたちも本当によく似ています。一番目の写真はお二方が混生しているところです。もう見分ける必要ないんじゃないか、くらい似てます。いやいや、それを見分けるのが植物通の醍醐味というものですよ。さて、トウネズミモチの「トウ」はおそらくまちがいなく唐なので、ネズミモチの方が古くから日本にいたのに対し、トウネズミモチはあとから中国経由でやってきた人たちなのでしょう。二人とも生命力が強くて逆境に遇ってもボロボロになってもクタバルことなく生き抜いている姿をよく見かけます。ククノッチがICUのキャンパスで知る限り、だいたいネズミモチとトウネズミモチを見かける割合は3:7から2:8。さすが大陸の厳しい環境を生き抜いてきたトウネズミモチ、完全に元祖に勝っています。

◆ トリオのメンバーの葉っぱを並べてみました。上のほうに横向きに置いてあるのがモチノキの葉。下の段がトリオ。左からネズミモチ、トウネズミモチ、クロガネモチです。どうでしょ。やはり一番似ていないのがモチノキだってこと、分かっていただけたでしょうか? そしてトリオはみんなそっくりなのが分かっていただけたでしょうか? みんな葉のフチの鋸歯(ギザギザ)がありませんね。こういう葉っぱを全縁といいます。トリオの面々はふっくらとした形で、いずれも濃い緑色で滑らかでつややかな印象ですね。しかし、むー。こうやって並べてみれば葉の形などの差が判りやすくて判別可能かもしれないけど、はたして林の中で単体で見たときに「あっ、これトウネズミモチ!」てなぐあいに判断できるのか(←できなかったら何が困るのか? 何も困りません。ははは。)でもククノッチは判断できないのはヤダヤダ。なんとしても違いのわかる男(ダバダー♪)になりたい。

◆ そのとき、悶々とする私の耳に天の声が。「すーかーしーてーみぃーよぉー…」 透かしてみる? そうか、葉っぱを光にかざしてみろいうことか。窓にテープで張ってみました… おおーっ。なんとトウネズミモチだけに亀甲形の葉脈が浮かび上がりました。これならネズミモチかトウネズミモチかは一発で判明する。でも、クロガネモチとネズミモチの違いは? まあ樹皮や樹木全体を見れば分かりやすいのです。クロガネモチさんは成木に生っても比較的滑らかな樹皮です。コブシさんとよく似てますな。で、葉の方は、まず厚さが他の二人よりぽってりと厚め。そして葉の基部(葉の柄の部分から葉の本体部分にうつる箇所)の角度が大きいものが多い。あと葉が主脈を中心に谷型にグッとへこんでV字がたになっているものが多いです。葉柄が赤紫になるものも多いです。秋になって生る実が他の二人は黒いのに対し、クロガネモチは真っ赤なので、これを見れば間違えることはありません。

◆ ネズミモチ・トウネズミモチを見たければ、図書館正面のスロープ脇、バカ山側の生垣、チャペルの生垣、マクリーン通りのスバル側壁沿い、もうありとあらゆるところで生垣として利用されている。だから、ひょっとして人の背の高さ以上にならないと思ってしまうかもしれない。しかしそんなことない。本当はもっと大きくなりたいのよ、あの人たちだって。そしてそれが許されたのが、野球グランドの周り。外野を取り囲むヒマラヤスギの合間に高さ6~7mに達しようかというトウネズミモチの高木をたくさん見ることができます。あとはチャペル前からパワーステーションへ向かう途中の右側ポンプ室脇にも大木があります。雄姿を見てやってください。

◆ 最後にあまり知られたくないネズミモチの名の由来は、秋に生る黒い実が鼠のフンに似ているからです。ああー、ひでえなあ…

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