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なか見検索とUnion Index (2005年12月13日)

今回は特別に黒澤公人が書かせていただきます。みなさんはUnion Index という言葉をご存知ですか。図書館に勤めている方はUnion Catalog という言葉を思い浮かべるかもしれませんね。Union Catalogは、複数の図書館の目録(本のカタログ)を一つの目録として編集しなおしたものですが、Union Index は、複数の図書の索引(本文内に使用されている用語がどのページにあるかの一覧)を一つにまとめたものです。図書館では通常、図書の目録を作成しますが、図書の索引は作成しません。一冊の図書に索引をつけるというのもなかなかたいへんな作業ですが、複数の図書の索引を一つに編集しなおすというのがどんなにたいへんか想像がつくでしょうか? 私が30年前に図書館短期大学で図書館の勉強をしていたとき、そこの教授が作成したというUnion Indexの作成過程について詳しい話を聞く機会がありました。

文献情報の収集・蓄積・検索・提供を研究するドキュメンテーションという学問分野があります。今では情報学の枠の中で語られることが多いと思います。その教授は1950年代、1960年代に出版されたドキュメンテーションの分野を代表する洋書58冊を選定し、Union Indexを作成したのです。本文を読みながら、図書カード(図書館の目録用に使われているカード)に用語を拾い出す作業は想像を絶する忍耐を要します。このインデックスの場合は用語だけではなく用語の使用例文も抜き出すというもので、最終的には作成したカードは数十万枚になりました。それを元に、図書にする原稿をその教授が一人で作成しました。

最近アマゾンの「なか見検索」やGoogleの “Google Print” など、図書の中を検索できるサービスが登場してきました。40年前、たった58冊の本のUnion Indexを生み出すためにどんな努力と集中力が必要だったかということを考えると、40年の月日をへて、多くの図書の中が検索できる時代になったことは、感慨深いものがあります。もし、この教授が現在も生きていて、アマゾンやGoogleの提供するサービスを見たとしたら、こんな感想をいうかもしれません。「きみねぇ。40年前に僕は一人でやったんだよ。たった、58冊だったけど、このUnion Index をみれば当時のドキュメンテーションに関することがすべてわかるようにしたんだ。手が痛くなるほどタイプライター叩いてさぁ、作り上げたんだよ。どんなもんだいっていうものなんだよ。」当時の教授の口調が、耳に蘇ってくるようです。教授は江戸っ子でした。

今後、多くの人たちの手によって図書のデジタル化は進み、図書の本文をどんどん検索できるようになるでしょう。大いなる発展に期待したいと思います。今回取り上げた本は、ICU図書館にも所蔵しています。興味のある方は見てください。すぺて、タイプライターで作成されたもので、必要に応じて、図表などが入れられています。

“Union index of books in the field of documentation.”
Baba, Shigenori (Gakujitsu Bunken Fukyu Kai, 1970) [Bibl 014/B12]

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