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勝ち組が幸せとは思わない事 (2006年1月25日)

ライブドアの堀江社長が逮捕されて各界が騒がしい。違法行為で逮捕・起訴されてしまったのだから、その罪は言い逃れようもない。その罪が如何ほどのものかの判断は司法にお任せするとして、フジテレビ買収劇に始まった今回のライブドア騒動が起業家の倫理・理念の再考を促がした事だけは、結果として彼の功名と捉えたい。

法の範囲内であれば金儲けに邁進して全く問題はないし誰も文句は言えない。果たしてそうだろうか。「問題はない」とはどういう意味なのか。法律を守っているという意味か。もしそれであれば先の文は「法の範囲内であれば違法ではない」という全く意味のない文章になる。「問題ない」と云う時、人は自らの倫理・道徳感に照らし合わせて価値判断の結果を表明している。つまり悪くはない、と。確かに金儲けは悪ではない。株式市場は基本的に金儲けのための場所である。しかしそれ自体が目的化した金儲けは非常に「不健全」ではないか。儲けた金の使い道が次なる金儲け以外に考えられていないという点において不健全であると。

「ホリエモンが夢を与えてくれた」という声があると聞いた。笑止。死ぬまで終わらない金儲けが夢とはなんとチンケな人間か。儲けた金を何に使うのか、その用途に思い至らないまま金の亡者に「夢」などという賛辞を送るとは安易に過ぎると思う。2000年、HIT Shopの重田康光氏の率いる光通信の株は3ヶ月間に20万円以上下げ、ITバブル崩壊の引金を引いた。『光通信の天国と地獄』氏家和正(道出版 2000)[548.7/U57h] を紐解く。重田社長は自社のホームページで社員に「時価総額を10兆円にする!」と檄を飛ばしたそうだ。その急成長と崩壊の構図は今回のライブドアのケースに生き写しで、苦笑を誘う。人は過去の教訓から中々学ばないという事だろう。

筆者はICUに在学中、就職に際しての説明会(だったと思う)での庄司太郎教授の語った言葉を決して忘れる事ができない。「私は皆さんに、世の中に出て損をする人になってほしい」と。「損な人生」すなわち金銭的にあまり恵まれない、自分の欲望はほとんど満たされず、人にばかりいいところを取っていかれる、そんな人生。その逆説の心は、一生かかって打ち込める仕事、世の人と世界平和に寄与できる仕事、後世に己の存在を残す仕事、本当に濃い人生はその殆どが物質的・金銭的な実りは少なく、決して金儲けには直結していないという事だった。

何のために大学に入ってきたのか、何のために勉強しているのか、何のために生きているのか、それは損をするためです。そんな逆説から自分の人生を考え直してみてはいかが?

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