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ケネディたちのBirthday 2013-10-01

このところ、キャロライン・ケネディ氏の名前がしきりに取り沙汰されている。60歳以上の日本人には感慨深いことだろう。1963年11月24日、彼女は促されて、母の右隣りに同じように膝まずき、母が目の前の星条旗にキスするあいだ、その下に覆われているマホガニーの棺にさわっていた。6歳になる3日前のことだ。

その弟、幼いジョン・ケネディ・ジュニアが、運び出される父の棺に敬礼する姿を記憶に留めている人もまた多いと思う。11月25日、セント・マシューズ寺院の前で健気に挙手したその日は、ジョンの3回目の誕生日だった。

二人とも、パパから "Happy Birthday" を歌ってもらうことはできなかった。

同年5月29日、ニューヨークのあるホテルでケネディ大統領のバースディパーティがあった。招かれていたオードリー・ヘップバーンは "Happy Birthday Dear Jack" と歌って、キャロラインとジュニアの偉大なる父親の46回目の、そして最後となる誕生日を祝った。

その前年の5月19日には、10日早い誕生パーティが、マディソン・スクエア・ガーデンで催された。15,000人を超える観衆を前に、マリリン・モンローが "Happy Birthday" のMister President versionを披露し、その歌声はラジオの実況放送を通じて、多くのアメリカ人の元に届けられた。

伴奏は、1989年にNEA Jazz Masters Awards、2008年にはNational Medal of Artsなどを受賞し、2010年に91歳で没するまで、常に第一線で活躍し続けたジャズ・ピアニストのハンク・ジョーンズ。1976年の来日時には、アルバム "Solo 1976: A Tribute to Duke Ellington" を録音している。

デューク・エリントンはアメリカを代表するジャズバンドリーダー兼ピアニスト、作曲家。賞賛の言葉を一つ、引用しておこう。
"In the royalty of American music, no man swings more or stands higher than the Duke" – President Richard Nixon

さて、モンローの "Happy Birthday" にケネディ大統領は大いに喜んで、
"I can now retire from politics after having had Happy Birthday sung to me in such a sweet, wholesome way."
とコメントした。

彼のジョーク好きは有名で、ある時、さる国の元首の腕時計を褒めたところ、「わが国では、自分のものを褒められたら、それを相手にプレゼントする習慣がある。」と言って手渡されたので、「君を褒められたら困るな。」とジャクリーン夫人に言ったという逸話もある。
ただし、マディソン・スクエア・ガーデンには、夫人は出席していなかったらしい。

記者会見に臨んでも、彼がユーモアを絶やさなかった証拠として、 "The Wit of John F. Kennedy at the Press Conference" というレコードが残っている。両面合わせて約30分、40種ほどの会見を聴くことができる。このLPの裏解説に、
"During the campaign of 1960, in Virginia, J. F. K. said: ‘Mr. Nixon may be very experienced in kitchen debates. So are a great many other married men I know.’"
とあるのは、対立候補のニクソンが、1959年にモスクワで開催された「アメリカ産業博覧会」のキッチン展示場で、ソ連の指導者フルシチョフと資本主義と共産主義を巡って意見を交わした、いわゆる「キッチン討論」を皮肉ったもの。

そのニクソンは1968年、大統領選挙に再出馬する。最大の政敵となるはずだった、ケネディ大統領の弟ロバート・ケネディは、カリフォルニアでの予備選の祝勝会のあと凶弾に倒れた。民主党のハンフリー候補を僅差で退けて当選したニクソンはしかし、次の最大のライバルが、衆目の一致するように、ケネディ陣営の最後の人物、民主党リベラル派重鎮のエドワード・ケネディ上院議員であることを強く意識していたようである。

ホワイトハウスの主となって100日目の1969年4月29日、ニクソン大統領はアメリカ自由勲章(Presidential Medal of Freedom)の授与式で、180人のゲストにこう呼びかけた。

"Ladies and gentlemen:
As you can probably surmise, this is a very unusual and, for us, a special evening at the White House in this great room.
Before the entertainment begins, we have a presentation to make. I was looking at this name on here. It says, "Edward Kennedy (ここで間を置いて) Ellington."

モンローがケネディ大統領に "Happy Birthday Mister President" と歌ったときの伴奏者ハンク・ジョーンズがソロアルバムを捧げた、デューク・エリントンの本名である。この日はまた、デュークの70回目の誕生日でもあった。ニクソン大統領は、このあと次のようにスピーチを締めくくり、このジャズの巨匠の古稀をおおいに慶祝したと伝えられる。

"You see, this is his birthday. Now, Duke Ellington is ageless, but, would you all stand and sing "Happy Birthday" to him. And, please the key of G. [Laughter]."

[At this point the President played the piano and sang along with the guests in honor of Mr. Ellington's 70th birthday.]

参考資料
1. AP通信社編、朝日新聞社訳 : 『ダラスの金曜日 : ケネディ最後の四日間』(朝日新聞社 1964年)
・原題は "The torch is passed…"(大統領就任演説の一節 "…the torch has
been passed to a new generation of Americans…"より)
2. 油井正一 : 『ジャズの歴史物語』(スイング・ジャーナル社 1972年)
・(かつて、デュークの)「父はホワイトハウスの執事であった。」(p.137)
3. マリリン・モンロー : 『お熱いのがお好き』(King Record KICP56)
・"Mr. President, Marilyn Monroe!" というアナウンスから32年後の同じ5月19日、
ジャクリーン元夫人は亡くなった。
4. "The Wit of John F. Kennedy at the Press Conference" (Challenge CH618)
・クロージングナレーションが、コラム冒頭の二人の遺児の様子に触れていること
から、大統領没後に制作されたもの。

その他ネット上の各種情報を参考にした。

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