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『江戸川乱歩短篇集』(b/913.6/E24e) 2015-09-16

ぐずついた天気が続きますが、雨の日は読書の三余のひとつ。シルバーウィークに“それは九月初旬の蒸し暑い晩のことであった”と始まる小説を読んでみませんか。

「僕は人間を研究しているんですよ」と彼は云ったことがある。そして、「物質的な証拠なんてものは、解釈のしかたでどうでもなるものですよ。一番いい探偵法は、心理的に人の心の奥底を見抜くことです」と前置きして、事件の真相を明らかにしていく。「D坂の殺人事件」は、かの名探偵明智小五郎の初登場作です。

今年は江戸川乱歩の没後50年。テレビも書店も三省堂売店も特集を組んでいるようです。雑誌もまた然り。なかでも『ユリイカ』(P/905/Y99)8月号は、対談・評論・インタビュー・創作・マンガと力が入っています。明智を問い詰めるわたしが自分の実在を見失う、樺山三英の「D坂再訪」、水木しげるが描いたとしか思えない、ドリヤス工場の「D室の怪人事件」等々、充実の一冊です。(『ユリイカ』は1987年5月号も乱歩特集)

乱歩は「D坂の殺人事件」に、“明智の推理の最も重要なる部分、連想診断に関する話を詳記することが出来なかったことを残念に思う。しかし、この点はいずれ稿を改めて、他の作品において充分に書いてみたいと思っている”と附記しているが、それは次作の「心理試験」において遺憾なく果たされました。

作中のトリックが後に映画『007は二度死ぬ』に活かされた「屋根裏の散歩者」においても、明智は“心理的に人の心の奥底を見抜く”手法で犯人を名指ししています。三作併わせてどうぞ。

(M)

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