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新年おめでとうございます(古い雑誌から) 2016-01-07

『月刊円周率』創刊号(2009年11月)です。頒価314円。江戸時代の和算家、関孝和を描いた表紙を開くと、大きなアラビア数字3とピリオドだけが印刷されています。そのあとは1ページに1,000桁ずつ、びっしり数字が並んでいて、25,000桁まで。12月号はその続き50,000桁までを掲載している。

ずっと見て行くと、あるページに7777が3回、777が2回、77が15回出ています。これは発見と思いましたが、『不思議な数πの伝記』(414/P842pJ)には、777777777777(12桁)が小数点以下第368,299,898,266位から現れる、12桁の9はここから、1はあそこから、8は、6は…と書いてありました。さらに、01234567890の出て来る桁を9例、その逆順が現れるところ15ヶ所も教えてくれます。

この本、英語では「サンテンイチヨンイチゴキュウニロク…」に相当する文字数の単語で作文して暗記するんだと、例を示してもいます。長さはいろいろですが、"But I must a while endeavour to reckon right"(でも正しく数えるにはしばらく努力しなければならない)や、"How I wish I could enumerate pi easily, since all these horrible mnemonics prevent recalling any of pi’s sequence more simply"(πをすらすら言えたらどれだけいいか。こんな暗記法ではπの数字を簡単に思い出したりできないから)などは、意味もそれっぽくてナイスです。

ドイツ語やフランス語、スペイン語その他でも試みられていますが、意味は様々で、ルーマニア語は「あの有名で役に立つ数はこうやって書くんだ」と正統派。ポーランド語は「雨で靄っている日に学校へ小走りに行きたくなる奴は、たぶん恋で頭がいかれて、すてきな服を着て、愛する人の足下に倒れ込む奴じゃないか」と詩的(?)で、ポルトガル語は「私はいつも、怠惰な男の子のことが怖い」と、分かるようなサッパリ分からないような。

出原速夫『πを召し上がれ』(414/Iz992p)は、小ぶりで薄くやや縦長。白い表紙中央の四角に英語書名"May I offer some π?"と日本語書名を紅白で入れ、その下にアヒル数羽をあしらった、瀟洒な装丁がおしゃれです。著者はブックデザイナーが本職と聞けば納得がいく。この本は、3ページから70ページまで、中央には円周率が延々と続いていて、各ページごとに、そこに書いてある数字列の一部に因んだ文章を紹介してくれるという趣向になっています。

例えば13ページでは28について、小川洋子『博士の愛した数式』(913.6/Og242h)から、「江夏の背番号は28だった。大阪学院を出てタイガースに入団する際、球団から提示された三つの背番号、1、13、28の中から、彼は28を選んだ。江夏は完全数を背負った選手だった。」を引き、18ページでは440を採り上げて、最相葉月『絶対音感』(小学館)の「音楽家が実際の演奏の基準とするのはA(ラ)の音だ。オーケストラはこの音をもとに音あわせ(注:原著では音合わせ)をする。現在最も標準的なAは周波数440ヘルツの音とされる。ピアニストもバイオリニストもこの音を基準にして絶対音感を鍛えるわけだ。」を引用する。

32000については、「17世紀と18世紀のダホメの交換レートは、金1オンスにつき正確には32000個の子安貝であった。」と、経済人類学者ポランニーの『経済と文明』(332.44/P767dJ)を引き合いに出しますが、他にも、高橋悠治、夏目漱石、オー・ヘンリー、カレル・チャペックなど多士済々。ジョイスは"Finnegans Wake"(E/933/J85f3)から原文を紹介しています。

アインシュタインが出ていないのが少し残念な気がする。彼の誕生日は3月14日です。1592年ならどんなによかったか、と円周率マニアはきっと思っているに違いない。

数式と図形に満ちた『不思議な数πの伝記』には、28ページにわたって何の区切りもなく、小数点以下10万桁の数字が並んでいます。手元の『月刊円周率』2冊など、まさにトーローの斧ですが、振り回しているうち偶然、7174桁目からの4つの数字に当たりました。それは「2016」。本年もどうぞよろしくお願いいたします。(M)

おまけ:1メートルの長さ
これも『不思議な数πの伝記』に書いてあることです。地球は完全な球体で、表面はなめらかであると仮定する。この地球の赤道に(伸縮しない)ロープをぴっちりと巻き付ける。4万キロメートルですね。そして、ロープを1メートルだけ長くする。これで準備オーケーです。1メートル長くなったロープは赤道から少し緩むのですが、
1)ロープが赤道のどの部分からも等距離にあるようにしたとき(上から見るとロープは地球よりやや大きい同心円になります)、ロープと赤道の間の隙間はどれだけか?
2)ロープを地球の外部の一点からぴんと引いたとき(上から見るとロープはずんぐりした雨粒(しぶき)型になります)、その一点と赤道の間の距離はどれだけか?

答は1)約15.9センチメートル、2)約121.5メートル、だそう。文系頭の私は、問2)に「50センチ」と即答した愛すべき友へ、円周率の日でもある3月14日にホワイトチョコを贈ろうと思っています。

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