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11月25日の聴く・観る・読む 2016-11-14

星新一は生涯に1000本以上の作品を残して「ショートショートの神様」と呼ばれました。『おーい でてこーい』(JP/913.6/H922o)の表題作は、中学2年生用英語教科書”New Horizon English Course”(TJ/375.989/N6803-2/2001)にも載っています。映像化されたものも少なくありません。しかし、落語家による録音は珍しいかと思います。「戸棚の男」「四で割って」(『おかしな先祖』より)「ネチラタ事件」(『ちぐはぐな部品』より)の3作を収録したLP『星寄席』の発売は1978年11月25日のことでした。CDで再発売されたこのアルバム、競演しているのは古今亭志ん朝と柳家小三治という、何とも豪華な取り合わせです。

志ん朝は2001年に鬼籍に入ってしまいました。63歳での急逝は惜しんでも余りありますが、父親の古今亭志ん生と並び称される名演「火焔太鼓」その他、数多くの録音・録画を残してくれています。桂三木助の十八番を“一段と華やかにした”との評価もある「崇徳院」もその一つです。百人一首の「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ」を踏まえていますが、この歌、1970年11月25日に自決した三島由紀夫の『春の雪』(913.6/Mi53/2000/v.13)にも出てきます。

と云っても原作にはありません。行定勲監督の映画でのことです。冒頭で、幼い綾倉聡子と松枝清顕が百人一首で遊んでいる。二つ年上の聡子は崇徳院のこの歌を詠み、取り札を取って「私の好きな歌。はい」と清顕に渡します。「その歌の意味、わかる?」と問われて清顕はかぶりを振る。物語の行く末を暗示するプロローグとなっています。

「四月七日だというのに雪が降った」と始まるのは、久生十蘭の「春雪」です。解説に「同時代の文芸時評には、新進の三島を十蘭と比較したものもあり、三島が十蘭を意識していたであろうことは想像に難くない」と書く『久生十蘭短篇選』(b/913.6/H76h)は、“巧緻な構成と密度の高さが鮮烈な印象を残す全15篇”を収めています。「予言」もその一つです。

結婚式と披露宴を二日後に控えた安部忠良に、彼を恨む人物から手紙が届く。この先のこの日にお前は何処そこに着いて翌日こんなことが起きる、次の日はあそこに居てこんなことがある等と書き連ね、ひと月ほど後には新妻と誰かを撃ち殺してお前も拳銃自殺する段取りだ、と云う内容です。全てその通りになる。と、場面は後戻りして時は11月25日の結婚式当日。披露宴の余興の席に忠良が現れます。そして…。

十蘭に魅せられた読者はジュウラニアンもしくはジュラニアンと呼ばれます。“十蘭の小説家としての抜群の技量を理解するにはそれに応じた素養が読者にも要請されるという自負を持った、読者としての高踏派”だそうです。ひとつ読んでやろうじゃありませんか。

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