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スクロールされたイメージ (2007年4月~ )



【 展 示 解 説 】
図書館展示では書物の美しい装丁や活版印刷本の味わいといったところにスポットを当ててきた。これまで概観したように、書物は冊子体の出現により、検索の利便性が格段にあがった。辞書、事典類、新約聖書もまた冊子体で編まれた。さらに活版印刷術により、書物の量産、小型化が進んだことで読書スタイルが音読から黙読へと移り変わった。そのことで読み手の読書体験の内面化が一層進んだのであった。ここで視点を変えて冊子体以前の長い伝統に目を向けてみたい。 冊子体の出現以前、クムランの「死海文書」やエジプトの「死者の書」にみるように、書物の主体は巻物であった。絵巻物を含む巻物はスクロールするという行為により、見るものに壮大なスケールでイメージを現出させる。洋の東西を問わずその味わいは変わらない。人類の知の継承は長い口承時代を経て、口承から文字へと書き綴られるようになり、そして文字は巻物の中にスクロールされていった。現代という時代は検索の利便性を維持しつつも、その一方でめくる文化(冊子)から再びスクロールの文化へとシフトしているかのようにみえる。私たちはパソコン画面においてごく日常的にスクロール動作を行っている。今回の展示により多様なイメージの広がりを捉え、その味わいを鑑賞頂きたい。

「スクロールされたイメージ」で展示した資料の解説

  • 紫式部日記絵巻(むらさきしきぶにっきえまき)

    絵を藤原信実、詞書を後京極摂政良経の筆と伝えられている。詞書は鎌倉時代初期の日記本文を伝えるものである。有名な源氏物語絵巻の系統をひく、つくり絵の技法を用いながら、それとは微妙に異なる独自表現をもった作品として評価が高い。原本は絵、詞書ともに巻物の形態から額面装へと改められているが、展示の絵巻は五島美術館蔵「紫式部日記絵詞」の絵三図、詞書三段の複製である。

  • 能惠法師絵詞(のうえほうしえことば)

    平安朝以後の六道思想の盛行に伴い作成された蘇生譚の絵巻として有名。建長二年(1250年)頃のものと考えられている。展示の絵巻は広隆寺(京都)所蔵品をもとに複製されたもの。一般の絵巻は詞と絵が内容的に相互補足する関係にあるため、詞書のみをみることで物語の筋を理解することが出来る。それに対し、この巻物は絵そのものが物語の筋の進行に関わっているため、各段の詞書のみを辿ることでは物語を理解できない特異な構成となっている。

  • 伊勢物語絵巻(いせものがたりえまき)

    中世日本文学の元祖ベストセラー。作者は不詳。十世紀中ごろ~十一世紀初めに成立したとされる。平安前期の歌人、在原業平(825-880)の半生を中心とした描いた歌物語で、創作を交えたフィクションである。後に藤原定家(1162-1241)が百二十五段に纏めたものが広く流布した。殆どが「昔男…」から始まる短い文章と歌からなり、平安貴族の雅やかな恋物語が綴られている。『源氏物語』『好色一代男』『たけくらべ』ほか多くの文学作品に多大な影響を与えていることでも知られる。数多くの伝本が現存し、成立過程については諸説がある。展示されているのは久保惣太郎記念美術館所蔵の複製。

古典読解に挑戦!

「古典」と聞いただけで、しかめっ面になる人はいませんか? 古文のクラスで難解な文法を暗記しなければならなかった嫌な思い出が蘇ってしまうのかもしれませんね。それに、本展示の巻物に記された筆書を見てもチンプンカンプンですよね。でも、ちょっとした知識だけで、結構、読めてしまうものなのです。あなたもぜひチャレンジしてみてください。

  • 「かな」とは

    真名(まな)という言葉を知っていますか? 本当の名前という意味を持つ言葉ですが、何の事はない、現在私たちが漢字と読んでいるものです。大陸から輸入された真名に対して、日本語の音節を表すために使われ、くずして簡略に表記できるようにしたものが、仮の名前という意味で「仮名(かな)」と呼ばれるようになったのです。当初女性専用であった文字ですが、その流れるような美しさから絵巻物のような美術品においては本領を発揮しました。
    今回展示中の巻物の詞書(文章)は、ほぼ全て仮名によるものです。『伊勢物語 第二十七段』に使われている、純粋な意味での漢字は「女」「手」「所」「見」「我」「又」「水」の七文字だけで、あとは全てかなです。今あなたが読んでいるこの文章(漢字仮名交じり文)よりも簡単に読めるかも?

  • くずし字と字母

    漢字はその形の複雑さから、アルファベットと異なり、筆記・速記には向いていません。そのため、続けて滑らかに書けるように草書体(くずし字)と呼ばれる書き方が考案されました。これらのうち、極端に単純化されて、主として日本語の音節を表す(かなとして用いられる)ものが出てきました。ひらがなの誕生です。現在の我々が使っているひらがなは五十文字程度ですが、ここに落ち着く以前は、同じ音を表すのに複数のかなが存在しており、それらは時代により変遷してきました。
    たとえば「き」というひらがなは「幾」という漢字の草書体からできたものです。「幾」は「き」の元になった漢字という意味で字母と呼ばれます。「き」の音を表すかなはこれ以外にもいくつかあって、「起」や「支」を字母としてできたものが頻繁に使われていました。

  • 『伊勢物語 第二十七段』を読む

    伊勢物語は在原業平(ありわらのなりひら)の半生を、ドラマチックに脚色した創作とされており、全部で百二十五段からなります。展示中のものは第二十七段で「たらひのかげ」とも呼ばれる話。一夜の契りを交わした男が全く来てくれないので嘆きの一首を詠んでいる女に、それをたまたま見た件の男が返歌するというくだりです。
    この段に使われている主なかな(表記は現在のかな)とその字母を表にしてみました。オスマー1階展示スペースにもヒントと解答、解説が置いてあります。あなたも読解にチャレンジしてみてください!


  • 阿→あ
  • 井→い
  • 盈→え
  • 於→お
  • 可→か
  • 支→き
  • 介→け
  • 希→け
  • 佐→さ
  • 新→し
  • 曽→そ
  • 多→た
  • 貴→た
  • 奈→な
  • 尓→に
  • 乃→の
  • 盤→は
  • 悲→ひ
  • 身→み
  • 裳→も
  • 里→り
  • 越→を

失われた活字を求めて (2006年10月~2007年3月)



ご挨拶

前回好評を博した『バンクス植物図譜』は18世紀、キャプテン・クック第一回世界探検航海に同行したバンクス卿の植物標本をもとに、銅版から彩色図譜として出版されたものであった。産業革命が進展した18世紀は、大海を隔てた未知なるものが多くヨーロッパ社会にもたらされた時代であった。さらに時代を遡り15~17世紀の大航海時代に目を向けてみよう。地理上の発見を機に、ヨーロッパからみた未知なるものへの関心が世界史を動かすところとなったのが大航海時代であった。また大航海時代はキリスト教信仰の種が広く新天地に蒔かれた時代でもあった。

1549年8月15日、イエズス会司祭フランシスコ・ザビエルの鹿児島上陸によって、日本にはじめてキリスト教が伝えられた。当時の日本は、長き戦乱の世を収めた織豊政権による天下統一が進んだ時代であった。同時代、日本に伝わったものにはキリスト教のほかに銃、活版印刷術があげられる。今回の展示は、西洋活版印刷術によって日本で刊行された『キリシタン版』に注目した。展示しているキリシタン版ファクシミリ(複製)数点は、現在、希少中の希少な存在であるキリシタン版をもとに複製されたものである。『キリシタン版』とは天正の遣欧少年使節(1590年帰国)によってヨーロッパから日本に初めてもたらされた、グーテンベルク式印刷機を使って印刷された刊本のことである。長崎などに開かれたセミナリヨ(神学校)で印刷された書物の多くは、キリスト教布教を目的とした信仰書、教職のための語学書などであった。

当時最新のテクノロジーであったグーテンベルク式印刷機はフル稼働し、布教上大きな力を発揮した。しかしながら、本能寺の変以降、時の政権はキリスト教禁教政策をとることとなった。その後のキリシタン大迫害に至って、いったんは根付いた西洋活版印刷術は跡形もなく消し去られてしまったのである。キリシタン版印行に用いられた活字は現在1本も発見されていない。一説には潰されて火縄銃の弾にされたともいわれている。厳しい弾圧のなか、キリスト教信仰は江戸時代を通して地下に潜伏した隠れキリシタン(潜伏キリシタン)たちによって受け継がれた。現在、キリシタン版は世界中で32種70数点が確認されている。

2006年はザビエル生誕500年、また天正遣欧少年使節をローマに遣わしたアレッサンドロ・ヴァリニャーノの没後400年の節目の年でもある。出版メディアにおいて、ヨーロッパと「東の果の国、日本」との最初の出会いとなったのがキリシタン版の存在であった。表象するメディアと信仰について、かの時代に暫し思いを馳せてみよう。


Cardim, Antonio Francisco. Fasciculus e Iapponicis floribus, suo adhuc madentibus sanguine / compositus a Antonio Francisco Cardim, Romae : 1648

(カルディム著, 日本殉教精華, ローマ 1646年) キリシタン版ではないが、鎖国後の1648年、キリシタン殉教についてローマで刊行されたたもの。もともと3点ものであるが本学図書館ではそのうちの1点を所蔵している。宣教師や日本人キリシタンたちの活躍とその後の運命について書かれている。

活字のアウラ (2005年9月~2006年3月)



前回は聖書写本の複製版コレクションにより視覚的に美しい彩飾写本を展示した。今回スポットを当てる, 辞書コレクションは16~18世紀, ヨーロッパに おいて活版印刷をへてつくられた, いわゆる西洋古版本である。AからZに 語彙が排列される辞書はオンラインデータベースの原点でもある。産業革命期以前の手漉き紙により成り立つ西洋古版本のうちの辞書コレクションに ついて, 見開きより発せられる活版印刷独特のアウラを鑑賞してもらう。 彩飾写本に使われたヴェラム(羊皮紙)と比べ記録媒体として保存性には 劣るが, 15世紀グーテンベルクによる活版印刷以降, ヨーロッパでは生産性が高く取り扱いが便利な「紙」が大量に普及することとなった。本を成り立たせている重要な要素である「紙」の存在についても, あらためて捉えなおす機会としたい。古版本時代の本の構成についても簡単な解説を参考にされたい。

展示品一覧


Casaubon, Meric. De quatuor linguis commentationis pars prior quae, de lingua Hebraica, et de lingua Saxonica. London: 1650
ヘブル語・古英語注釈書



Lye, Edward. Etymologicum Anglicanum. London: 1743
英語・語源辞書



Bailey, N. Nathan. Dictionarium britannnicum; or, A more compleat universal etymological English dictionary than any extant. London: 1730
英語・語源辞書 数多くのイラストが掲載されている



Shaw, William. An Analysis of the Galic Language. Edinburgh: 1778
ゲール語文法書



Junius, Hadrianus. Nomenclator, omnivm propria nomina variis lingvis explicata indicans. Antverpiae: 1577
ラテン語辞書 16世紀ベルギーアントワープのプリンタとして全盛を誇ったChristoph Plantinの印刷所によるもの。見開き中央はプランタンのトレードマークである「黄金のコンパス・精励と不動」のデザインがみられる。



Collado, Diego. Ars grammaticae Japonicae linguae. Roma: 1632 (Facsimile Edition Tokyo: 1972)
「日本語文典」 1632年ローマで刊行された日本語辞書のファクシミリ(複製)版。17世紀, 日本宣教のためCollado神父により編纂された。同書はベッソンコレクション(海外キリシタン版)としても知られ国内では天理大, 筑波大図書館などが所蔵している。

古版本豆知識

  • 紙にまつわる話

  • 写本時代の中世ヨーロッパでは紙ではなく羊皮紙(parchment, vellum 羊・子牛・ヤギの皮)を本の材料としていた。12世紀, ヨーロッパにアジアから紙が伝わったが, しばらくは紙が本に使われることは少なく, 聖書や時祷書などはもっぱら羊皮紙に書写されていた。Scribe(写字生)が平均的な時祷書を1頁書写するのにまる1日かかったとする研究もある。大判 聖書を1冊, 羊皮紙で作る場合, 多くの羊や子牛がその材料となった。前回, 世界3大聖書写本の一つBook of Kells「ケルズの書」のファクシミリ版(複製)を展示したが, ケルズの書では約190頭の子牛が材料になったとされる。写本時代の本の製作はとても時間と手間のかかるものであった。その後15世紀のグーテンベルク以 降, 取り扱いが容易な紙がヨーロッパ中に普及するところとなり活版印刷の普及とともに情報の時間軸が大きく変化することになったのである。

  • 活字のなりたち

  • 印刷活字のなりたちはグーテンベルクから19世紀前後まで殆ど変わらなかった。父型(パンチ)を作り, そのパンチで母型を作る。母型を鋳型にセットして合金(鉛, 鈴アンチモニー)を流し込んで活字を鋳造するというのが大まかな流れである。ちょうど粘土の塊にハンコを押し付けて, できた穴に石膏を流し込むとハンコと同じ型が取れるのと同じイメージである。熟練工はひとつの鋳造器から一日4,000個の活字を作り出したが, これは10~12秒で1つの活字を作った計算になる。

  • 古版本と印刷技術

  • 古版本とは西洋では手引き印刷の時代に刊行された本のことである。グーテンベルクが活版印刷術の発明をした1450年代から1830年頃までの手引 き印刷の時代とされている。特に印刷技術が生まれて間もない1500年までの時代をIncunaburaインキュナブラ(揺籃期)とよんで書誌学上の時代 区分がされている。このインキュナブラの時代にヨーロッパ250都市, 1,000箇所以上の印刷所が活動し約2,000万部の印刷本が刊行された。ヨーロッパでは印刷本が中世1000年を通して製作された写本の数をほんの数 十年で上回ってしまったのである。

古版本を語る


今回の展示を担当した国際基督教大学図書館員、久保誠氏に古版本のさまざまな側面についてインタビューした。久保氏は私立大学図書館協会、西洋古版本研究分科会で 2002~2003 年度代表を務め、現在も明治大学で西洋古版本のコースを受講している。(インタビュア:松山)


時空を超える 「描かれた文字」 (2004年4月~2005年8月)




『言葉は飛び去るが、書かれた文字はとどまる。』この言葉はローマの古い格言ですが、この言葉ほど、図書館の存在意義を示唆してくれる一文はないかもしれません。今日、様々なメディアの発達は高度情報化社会をもたらし、活字文化にも多大な変化を与えました。電子ジャーナルや電子ブックに代表される活字メディアの急速な進歩は、図書館にも影響を及ぼし続けています。ICU図書館もこれに対応すべく、オスマー図書館において電子情報サービスの提供を模索してきました。ICUの学生のみなさんは、印刷物である図書とインターネット上の情報の双方を使って、日々の学習に活かしています。活字のみならず、電子テキストも使いこなして、「読む」ことができる時代になりました。しかしながら、本の始まりは手書き文字で、電子テキストや印刷活字よりも遥か昔に、すべて人の手によって作られていたのです。今回の展示は、ICU図書館の貴重書コレクションの中から、出版文化の源である古い聖書写本の複製版を紹介し、文化芸術としての書物について考えをめぐらせていただければと思います。


ICU History 1 その萌芽から創立まで (2000年4月~2004年8月)

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