◆ ええ、本日は榎(エノキ)について書いてみましょうか。エノキと聞いて「ああ、あの木だね」と、ハッキリしたイメージをもてる人はあまりいないかもしれない。ククノッチもちょっと前までそうだった。だってケヤキやムクノキみたく樹皮に際立った特徴がないんだもん。見てください。見事に「ただの木」です。成木になるとこのように古くて汚れたコンクリートの表面のような質感になるんだけど、環境や樹齢によってかなり見た目が変わるのでかなりやっかいです(まあこのへんの事情は他の多くの樹木も同じ)。でも、エノキって木は昔から人々の生活の場に植樹されて親しまれてきた木です。榎田、榎戸、榎本、三本榎など人名地名に使われているのがその証拠。しっかり根を張り葉を茂らせ、丈夫で長生きであることから農家の庭や田畑の脇、江戸時代には一里塚の目印として植えられたこともあります。国蝶オオムラサキの幼虫が育つ揺籃としても知られていますな。
◆ 和食の汁物に欠かせないエノキダケはもとはエノキに生えることが多かったからこの名前。ホラ、松茸ってアカマツの根元に生えるからマツタケなんだ。それといっしょね。んでも皆さんが知っているあの白いヒョロヒョロしたエノキダケはもやし栽培されたもので、天然のエノキダケとはまったく似ても似つかぬものでです。「天然 エノキダケ」で画像ググって衝撃の事実を知るべし。
◆ さて、今回も枝を写真にとって見ました。あれえー、又かよ。ケヤキ・ムクノキ(前回ブログ)と見た感じほぼ同じじゃん! と思ったアナタ、ピンポンです。似てます。ははは。この辺で「もうどうでもいいや感」が脳内に噴出して、このブログを見放す人もあるやに思われますが、まあいいです。エノキもムクノキと同じく、旧分類ではニレ科だったのが、アサ科になってしまったようです。
◆ その分類について持論というか異議というかひとこと文句を言いたい。デジタル技術とDNA解析手法の進歩によって動植物の分類法もどんどん進化しているのはいいんだけどさ、それはそれとして何ていうか人間が暮らしの中で接してきた歴史・文化的な背景をもとにした生物分類てのも別にあっていいんじゃないかと。そんなことしたら何が正しいか分からなくなる? うん、確かに文化は時代・地域によって大きく異なるから、色んなローカル分類、究極的にはマイ分類というのも出てくると思うんだけど、それもいいんじゃない? それが科学とは言わないけど、生活や経験あるいは心象による分類がいっぱいあって、それらが比較されて「ああでもないこうでもない」って対話するような空間があってもいいのではないかな、それって人間らしいんじゃないかなって。つまり生物学にロマンが欲しい。野外実習でクワの実ワンサカ採ってきてジャム作ったり、スケッチ終わった柿の実を干し柿にしたリ、オートクレーブで栗蒸して食ったり(全部食い物かよ…)。とにかくICUの皆さんは正しいとされる自然科学の知識以外にも人文のまなざしを持って自然に接してほしいとククノッチは思います。
◆ そんで、あたくし的にはエノキはケヤキ、ムクノキとともに誰がなんと言おうとも旧ニレ科三兄弟なのです。断じて麻なんぞの仲間ではない。なんだけど、ニレ科の名称の元になっているハルニレ・アキニレ(両方ともニレ科)はマイ分類ニレ科には含まれていませんの。だってICUで見かけないんですもん。ほほほ。(シーベリーの南側にあるというのですが、見つかりません。見かけた方はぜひご一報を。)
◆ あっ、そうだ。エノキの見分け方を教えるのを忘れてました。これ3つともエノキの葉っぱ、ウラから見たところです。どうですか。葉の根本から三本の葉脈が放射線状に出てますね。このあたりはムクノキにも似てます。他に何か気づくことはないかなー。ハイ、アナタ、正解です。ギザギザですよ。鋸歯(キョシ)ですよ。キョシが葉の半分より先にしかないんですよ。ハイ、そっちのアナタ、正解です。葉が左右対称ではなく若干ゆがんでます(中にはゆがみがハッキリしない葉もあり)。これだけ知っていればすぐに見分けられます。皆の衆、行きてエノキをゲットせよ!
◆ 追伸 先日の新入生ELA図書館オリエンテーション終わった後で、学生さんから「私の祖父が昔ICU図書館に勤めてました」って言われた。お名前を聞いて知らない人ですって言っちゃったんだけど、後で調べたら日本図書館界に大きな足跡を残した、ちょっと前の図書館員でこの人を知らない人はモグリといってもいいくらい有名なNさんであったことが判明。ICU図書館には1958年から数年間在籍していたらしいのだが、そのことを全く知らなかったので、苗字を聞いてもまさかあのNさんとは思わなかった。恥ずかしい。図書館の古いアルバムにNさんと思しき方が写っています。件の学生さん、これを読んだらレファレンスサービスセンターまでお出でいただければお見せできます。ぜひ。