昨年2004年12月、図書館界にとっては衝撃的なニュースが流れた。Google社がイギリスオックスフォード大学・アメリカハーバード大学などの図書館と蔵書の電子化に関して提携したと言う。他にスタンフォード大学図書館・ミシガン大学図書館・ニューヨークパブリックライブラリーの計5館が提携しており、これらの図書館の蔵書のうち著作権の切れた図書について、Googleで全ページが読めるようになるという。(著作権が有効なものは抜粋を3箇所まで読む事ができる)
このままいけば、近い将来デジタルでしか「出版」されなくなるテキストが増えるだろう。また、著作権が有効ないわゆる新刊テキストに関しても、Googleによってフリーでアクセス可能になる事も考えられる。図書がなくなる? 図書館はどうなるのか?
図書館・美術館・資料館。他にも○○館と名のつく施設は多いが、図書館と他の○○館から受けるイメージは決定的に異なる。それは図書館が、地域・学校などに多数あることで身近に感じているという点と、利用者自身が積極的に参加し活用する施設であるという点においてではないか。つまり図書館は利用者によって「図書館」たりえる。利用者のニーズから離れたところでは存続し得ないものである。今後デジタル出版がメインになれば、利用者は図書館まで出向かなくてもテキストを入手できるようになり、利用者は激減する。利用者のいない図書館はもはや「図書館」ではなく「図書」館でしかない。出版と言う事業が紙媒体で行われていた頃の図書という資料を保存・展示・貸出している施設にすぎない。
選書・発注/受入・装備・整理・貸出/返却。現在の図書館員の担当業務は多くが図書の流れに沿ったものだ。図書が無くなればこれらの業務編成は再構築を余儀なくされる。大学図書館においては、従来の利用者教育の枠を越えて、学習・研究活動全般に対しての幅広いサポート業務をメインに据えるのが妥当だ。単に図書やデジタル情報を購入・管理・提供するのではなく、学生・教職員とともにそれらを使って情報入手に関わり、場合によっては研究の過程をともに歩むようなアカデミック・コンサルタントとしての手腕が要求されるであろう。そのためには、例えばメンバー制のサポートサービスを展開し、一人一人にメルマガやemail等を使って、研究テーマの情報を流すなど、きめの細かい対応が必要になる。図書という情報の入れ物に長年携わってきた経験を生かして、図書の無い時代に「図書」館員ではなく「図書館員」として花咲くにはそれしか道は残されていない。