パイオニアたれ -松浦武四郎と明治知識人の系譜-

開催期間

概要

 2018年は、北海道の名付け親としても知られる、幕末から明治にかけての探検家、著述家、松浦武四郎の生誕200年、没後130年の節目にあたります。松浦武四郎の偉業は多岐に渡り、ひとことでは言い表せません。武四郎が旅の途中で知り合った人々の伝手で調達した由緒ある木片部材をもとに、8年余りの歳月をかけて作り上げた書斎が「一畳敷」です。部屋としては一畳という最小限の広さに、古希を迎えた武四郎とその知友との思いが集成されたような小宇宙がひろがります。なぜ一畳だったのか、などについては、本展と同時開催の湯浅八郎記念館「ICUに残る一畳敷」にゆだねるとして、歴史資料室企画展では、なぜ「一畳敷」が戦後開学したキリスト教大学である本学にあるのか、ということから武四郎を端緒にICU開学に至るキリスト者知識人の系譜を辿りたいと思います。

 明治時代、日本プロテスタント宣教の主流をなしたキリスト者のグループは、横浜バンド、熊本バンド、札幌バンドというそれぞれ地名に由来した名称で呼ばれていますが、なかでも札幌バンドの中心人物として知られる植物学者の宮部金吾は、武四郎と親交がありました。宮部は、武四郎の影響のもと植物学を志したのでした。宮部とは札幌農学校二期生の同窓、内村鑑三もまた、札幌バンドの中心的働きをなしており、日本におけるキリスト者の系譜をたどるうえで忘れてはならない人物です。

 本企画展では、とりわけ札幌バンド、熊本バンドにおけるキリスト者知識人の幅広い交流を取り上げ、そこから見えてくるパイオニアスピリットに武四郎の偉業を重ね合わせます。そうした人的ネットワークから引き継がれた先にあるものとしてICUを捉えることで、いま本学に根付くパイオニアスピリットについても考える機会にできたらと思います。 国際基督教大学 歴史資料室