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先の見えない不安 (2020年4月19日 日曜日)

いい天気の日曜日にうっかり二度寝をしたら、昔の夢を見ました。 夢の中の私は大学3年生で、泣きながら退学届けを書いていました。 「人生がつまらない。大学も卒業したくないし、単位も取れていないのでたぶん卒業できないかもしれない。 就職もできる気がしない。就職したとしても役に立つとは思えない。詩人になりたい。でなければ何にもなりたくない。 どこかへ逃げてそのまま消えてしまいたい…。」と思いながら。

ハッと目が覚めて、夢で見た時期からすでに4年経った今、現実の私は退学届けを提出することもなく大学を無事卒業できていること、 とりあえず大学の職員として3年働いてきたという事実があることに気付き、うれしく思いました。 しかし、思えば大学生のころは、いつも「先の見えない不安」にさいなまれていました。

ところで2020年のいま、新しいウイルスの蔓延に世界中の人たちが衝撃を受け、社会・経済もほとんど停止してしまっているだけでなく、心理的にも状況におびえてしまい、先が見えない状態にあるといえます。 現役の大学生のみなさんにおいては、二重・三重の「先の見えない不安」を抱えているだろうということは、 想像に難くありません。

ここで、少しばかりわたしの自分語りにお付き合いください。 私は図書館学科に通っていましたが、情報化社会の現代において「司書」という仕事はとても印象が薄くなっています。紙の本はあまり売れなくなりました。誰もが検索窓に知りたいことを打ち込めば、情報にアクセスできる時代です。司書としての働き口は、決して多くはありません。

図書館学科に入学して最初にやることといえば、驚くことに数学とプログラミングでした。 1年次でそれらの成績があまり芳しくなかったわたしは、図書館学に見放されてしまったような気がして、自分のするべき学問から気持ちが離れて、その後はあっという間に腐ったミカンになりました。 夜通しお酒を飲んでくだをまいたり、文化祭にヘンな出し物を出したり、アルバイトに精を出したり、 挙句には大学のカリキュラムをほとんど無視して、自分の好きな心理学や哲学や芸術の授業に勝手に出席したりしていました。 かくして、冒頭に書いた「大学も卒業したくないし、単位も取れていないのでたぶん卒業できないかもしれない。就職もできないだろう」 という「先の見えない不安」が生まれたのです。自業自得過ぎる話で恥ずかしいです。

その後、苦しみながらなんとか司書資格と卒業証明書をもらうことができまして、 (ICUと同様、掲示板に卒業者の学籍番号が掲示されるスタイルでした。単位1個でも落としてたら留年だったので、そこに自分の番号がなかったら、 という心配でつぶれるかと思ったものです!)「一生大学を卒業したくない」という思いで、わざわざ少子高齢化で入学者が減っていく、産業としては右肩下がりの大学に職を得ました。 新人として配属された部署は大学で学んだこととはかけ離れていましたが、そこの2年間でも学生や同僚のみなさんとの出会いや、仕事に関する新たな学びを得ました。様々な業務があって最初は四苦八苦しましたが、2年でそれらもやっと板についてきた頃、異動の辞令が出ました。その先が、

図書館でした。

司書の学科で司書になりたくて一生懸命に勉強していたのに 図書館とは全く関係ない仕事に就く同級生をたくさん見てきましたが、そのなかで一番 不真面目なわたしがなぜか司書になってしまったのです。なんというもったいない僥倖でしょうか。 いや実を言えば、現在の情勢で異動前の部署が紛糾していたので、嬉しいけれど今じゃなくていいだろ……! という葛藤はとてもあったのですが。

いま、新型コロナウイルス感染拡大の情勢を受けて、図書館は現在一部の方を除いて館内でのサービスを停止しています。 利用者の皆様の中には、「先の見えない不安」を抱え、自宅で待機を余儀なくされてせめて本でも読みたい、 あるいは必要な情報にアクセスしたい!という気持ちの方もおられると思います。 図書館という「場」の提供ができずに利用者のみなさまにご不便をおかけしてしまい、 個人的にもとても申し訳なく思っています。

しかしもちろん、ICU図書館は私のような経験の浅い職員ばかりではありません。 熟練かつ最先端の先輩図書館員さんたちが、緊急閉館時でも令和の図書館サービスをデザインすべく 日夜努力を続けていらっしゃいます。たとえば、みなさまが自宅からでも図書館にアクセスする方法は、実はたくさんあるのです。 もともと、ICU図書館は膨大な量の電子資料を所蔵しています。 それに加えて、みなさまのお問い合わせに応じて、電子データベースや、e-bookなどを鋭意拡充中です。 また、特設サイト「教える図書館」 では、先輩図書館員のNさんやMさんが動画でこれらの電子資料の使い方を楽しく教えてくださいますので、一度のぞいてみてください。

人生とは地図のない航海です。「先の見えない不安」に絶望することもあるでしょう。しかし、いつでも思い返すと意外となんとかなっているものです。自宅にこもり、図書館に来館することができなくても、幸い今の時代は知識に拒まれることはありません。 カリキュラムやタイムラインからやってくる受動的な情報に触れるのもいいですが、 たまには偶然の流れに任せて電子資料の海を好きなように泳いでみませんか。
みなさまの健康をお祈り申し上げます。

★日曜日に読む、おすすめ本
J.D.クランボルツ, A.S.レヴィン著 ; 花田光世, 大木紀子, 宮地夕紀子訳.その幸運は偶然ではないんです! : 夢の仕事をつかむ心の練習問題.東京 , ダイヤモンド社,2005,229p,4478733244.(2階開架に所蔵。図書館が開館になったら読んでください)

スタンフォード大学のクランボルツ博士が提唱するキャリア論「計画的偶発性理論」をベースにした自己啓発本です。 幼稚園生の頃、1/2成人式の作文で、将来の夢を画用紙や作文に書いたことはありますか。 その夢はいま、叶いましたか?
「計画的偶発性理論」とは、 簡単に言うと「人生はなにが起こるかわからないのだから、将来の夢や目標をあらかじめ決めておく必要はない」 という理論です。実際に著者がおこなったキャリアカウンセリングの例をもとに、読みやすく「先の見えない」人生を指南してくれる一冊です。

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