◆ 秋になって葉っぱも枯れてきちゃったから、これからは実をネタにしよっと。この実は何でしょうか。これはアオギリの実ですね。あっ、言っちゃった。青といってもブルーではなくグリーンなんですが、とにかく青桐というからには本当に青いのです。しかも葉っぱだけじゃなくって幹までが緑色なんです。なんでかっていうと、考えてみりゃあたりまえなんだけど、幹でも光合成しちゃってるんですね。これ、葉緑体の色なんですわ。
◆ ククノッチは大学生のころ、植物生理学の授業で知った植物の光合成の仕組みに驚愕しました。思っていたよりもずっと複雑な仕組みだったからです。まあ、光を浴びただけで蛋白質を作るんだから、そう簡単ではないのでしょうが、それにしても顕微鏡のプレパラートでムニムニ泳いでいる(最先端資源として脚光を浴びているあの)ミドリムシから樹高100m超のセコイアメスギ(何でそんなに高くなる?)にいたるまで、みんなそろってこんな離れ業をやってのけてる植物って何? おまえらすごすぎるよ。と思ったのでした。
◆ 次女のクマノミズキさんは、幼少のミギリより秀才の誉れ高く成績も体育以外はすべてトップ、小中高を通じて読書感想文、書道、ピアノ、弁論大会、出場したコンクールすべてで好成績を上げ、国立大学法学部に進みこれまた抜群の成績で卒業。近々良家に縁ありとの噂のある姉とは対照的にキャリア街道を突っ走り、現在は某中央官庁に勤務。入職数年にして末は次官かとまで言われている。あまりに頭脳が明晰すぎるせいか眼鏡の奥の鋭い眼光が人を寄せ付けないところがあります。葉は整った紡錘形でやや暗緑色。先はとがりシャープなイメージです。姉のミズキさんよりひと月ほど遅れてそっくりの花を咲かせるところは、その華やかさに対するあこがれがあるのでしょうか。ちょっと悲哀を感じます。幹の方はミズキさんに近い浅い模様のものからかなり深くて荒々しい感じに縦方向の裂け目があるものまで、かなりバリエーションが見られます。ICUではさほど目立ちませんが、ダイアログハウスの樫寮側エントランス外や新D館裏、図書館オスマー館南側植え込みなんかに定位置を確保しています。
◆ 三女ハナミズキは目立ちたがり屋の女子大生。あだ名はヨックモック。もともと小柄でそれほど派手な性格ではなかったのが、高校留学先のアメリカで大変身。彼女のいくところ常にリオのカーニバル状態。現在は都内の私大で広告研究会なるちゃらいサークルに所属し、春は花見、夏は海の家、秋は温泉、冬にはスキーの合間に旅行とお店巡礼と合コン。BMW彼氏を足代わりに使うというバブル時代からワープしてきたかのような「翔んでる」キャンパスライフを送っていらっしゃいます。いつもブランド品で身を固め、化粧ばっちり、スッピンは墓場まで持っていく覚悟です。夜遊びがたたってか最近は葉にもツヤがなくなってきて、粉がふいてることがたびたびあるそう。幹もひび割れが目立ち始めました。それでも春になると私の季節とばかり純白の花で街ゆく人の目を独占。いけるとこまでいくんでしょうな。ICUではロータリーから高校への直線道路と一昨年ケネディ駐日アメリカ大使が植樹したダイアログハウス前のものがあります。
◆ 四女サンシュユは飾り気がないと言えば聞こえはいいのですが、要はかなりのオタクです。それもアニメ、コスプレ、歴女など、華やかな一面を見せるような「夢見る少女」系ではなく、もっぱら情報・機械工学方面です。コンピュータ、鉄道、工場、建築に萌えて、ついにはアマチュア無線まで初めちゃうという、孤高の工学女子。最近はEMEやるのに数々の障壁を乗り越えることに躍起になっています。(月面反射通信だそうです。なんじゃ、そりゃ?) 春にはなかなか可憐なポンポン状の黄色い花を見せてくれますが、これまで何度も、似た花を咲かせるマンサクと間違えられており、そのたびに「あんな田舎者と間違えんな!」と怒っています。三女のハナミズキとは性格も志向も真逆で仲が悪く、ここ数年言葉を交わしたことがありません。葉がねじれることが多く、毛深いことをちょっと気にしています。一番の自慢は秋にグミに似た可愛い赤い実をつけること(山茱萸の茱萸とはグミのことです)。これを乾燥させたものは生薬や薬用酒の材料として人気があります。キャンパス内で目立っているのは旧D館北側の噴水脇に生えているものです。
◆ 末っ子だからなのか、ヤマボウシは天賦の素直さと優しさで、姉たちからも、友人からも愛される存在。大学受験を控えて予備校通いにも忙しいこのころ。夏に咲く花(正しくは「総包」)は三女のハナミズキに似てます。ハナミズキの総包の先端が食いちぎられたように欠けているのは華やかさの中にも粗雑なものを感じますが、ヤマボウシは先がすっと手裏剣のように尖っており、卑屈さのないまっすぐな性格そのままです。秋口に成る真っ赤で可愛いイボのあるサクランボみたいな実はマンゴーみたいでおいしいと、知る人ぞ知るひそかなジャムの材料として評価を得ています。図書館東側にある大木は紅葉の季節になると素敵なグラデーションを見せてくれます。樹皮のはがれ方もなかなかオシャレで、そのうえ幹は固くて強度が必要な材木に使用されてます。オールマイティな末っ子ですね。
◆ 落葉の季節になったので、これまでみたいにフレッシュな葉っぱをゲットできなくなってきました。どうしようかな。