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Save library as... (2005年6月6日)

図書館を「別名で保存」する時代がきた。

レファレンスサービスセンターで日々利用者に対応していると「利用者の学習・研究のしかたがずいぶん変化したなあ」と感じる。利用者が図書館にもとめているサービスや求めている機能は、図書館員たちの考えを超えてしまっているんじゃないかなと思えてきた。以下、確固とした根拠はないのだけど、今後の図書館のあり方ついての私見を述べさせてもらいたいと思う。

最近の図書館を取りまく状況を俯瞰してみると、ひとつの大きな流れとして、紙からデジタルへとメディアが移行していることが挙げられる。特に外国語雑誌はオンラインデータベースやeジャーナル化が進んでいて、ベンダー各社の競争は激化する一方。これとは逆に紙の雑誌の需要はどんどん下がっているので価格は毎年高騰している。多くの外国語学術雑誌の記事はネットでアクセスすることが常識になるんじゃないかな。もうなってるのかな? ICU図書館でも外国語雑誌のオンラインデータベース導入してから、コピー機の稼働率がかなり下がっている。これは従来、コピー機を使って冊子体雑誌から入手していた全文記事を、今ではオンラインデータベースからプリントアウトする事が主流になったせいだと考えられる。

図書に関しては依然として冊子体が幅を利かせているけれど、「「図書」館にならないために」(2005年1月31日) でも書いたように、書籍の出版流通の土台がGoogleや他のネット企業によって根底から覆される可能性もある。ケーススタディにはまだお目にかかったことがないんだけど、今の学生はおそらくレポート作成にあたって、ネットを通じて得た情報を相当量使っているのではないか。どうですか、 学生諸君? そして、ネット上にも10年前にはなかったような、フリーでありながら「貴重」で「質・価値の高い」情報は増えてきているよね。出版業の冊子からデジタルへの移行が本格化すれば図書館の蔵書の増加率は(特に学術図書館においては)この先減少していくことが必至です。

考えてみれば図書も雑誌も情報ソースという意味においては、その入れ物の物理的名称(もしくは流通形態)であり、CD-ROMとかDVDほか媒体(メディア)の名称でしかない。この先ネットがますます主流となり、個々人がネットに接する時間が増えれば、情報は主にネットを通じて取得するものになり、本はネットを補完するサブ媒体として存在していくことになるんじゃないかな。すぐに本が消滅することはないけど、「本はなくなる」を前提に図書館の将来を考えるのに早すぎる事はないと思う。

120台のネットワークパソコンを装備したオスマー図書館はいまのところ盛況だ。でも全キャンパスワイヤレスネットが実現した後の繁栄は保証されていない。自分の持ち込んだパソコンでキャンパスどこにいても文書作成ができるんだったら、絶対図書館に行かなくちゃいけないという積極的な理由はない。本と雑誌はネットで提供されるようになるし、そのネットはキャンパスどこでも使える。そうなると、むしろ図書館の外にいた方がメリットがあるのかもしれない。図書館の外でならコーヒー片手にレポート作成ができる。友達と大声で話しても、ダウンロードしたムービーをガンガン鳴らしながら再生しても、公序良俗に反する(!)ようなサイトを見ていても誰も気にしないし、文句も言わない。困るのはプリントアウトできない事くらいか。それなら図書館でなくてもプリントアウトセンターがあれば事足りるでしょ? こう考えてくると「図書館はどうしたらよいか? 」という問いかけ自体を疑問視しなければならないのかも… こういう問いかけはどうですか? 「もはや我々が図書館であるべき時代は終ったのではないか?」

90年代、大学図書館がその名称をメディアセンター・情報センター・文献センターなどに変更する例がいくつかあって、こそばゆいような違和感と新時代の眩しさをもって迎えられたように記憶している。CD-ROMやインターネットなどのいわゆるニューメディアが台頭してきた時期、図書だけを提供する場ではないという意味が込められたそれらは名称としては正しかったと思う。だけど、今やそれも適切な名前ではなくなってきた。キャンパスじゅうどこでも、家にいても、外国に行っても、どんな情報にでもアクセスできるユビキタスな環境が実現してきたからだ。「センター」の存在意義は急激に薄れるだろう。もはや図書館であろうとしてはいけない。メディアセンターでもいけない。じゃ、どうすればいいのか。

他の施設を取り込むか、他の施設と合体してしまうのはどうだろう。オスマー図書館がコンピュータセンターの機能を内蔵した事で成功したように、飲食可能なラウンジを取り込む(既成の店舗を誘致しても良いかも。BGMもあり)、教室を取り込む、ディスカッションルームを取り込む、教材作成のラボ、スタジオを取り込む、ショップを取り込む、パフォーマンスができるステージを取り込む、究極的には温泉を取り込む(…あながち冗談ともいえない!)

とにかく図書館自体に集客力がない時には、より魅力的な人の集まる施設と合併する事で繁栄するというのは、駅前にできた公共図書館がどこも盛況であることで証明されていること。図書館員が図書館という独立した建物を我が城のように思い、情報へのアクセスという単独のサービスをもって管理運営にあたるのではなく、今の利用者が望むそれ以外のサービスをも包括した多角経営、または他部署と一緒になって複合施設(コンプレックス)の良きテナントとして、その存在感をアピールしていく事がポイントになるような気がしている。

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