収録数全351句。春夏秋冬正月の5部からなる句集です。オビに著者紹介がありました。“ジブリ「コクリコ坂から」の原作者は謎の俳人であった”。小沢信男の跋「句集『娑婆娑婆』をひらいて」が、句を引用しながら作風を伝えて秀逸です。
“ひらくといきなり、こんな句に出会います。
二ン月の荷に根菜とコンサイス
なんだこれは、ただの語呂合わせではないか。(中略)この句集の、これが特徴のひとつらしい。続々とでてくること。”. とあって、そのうしろには、
スカートで夫の昼寝をマタイ伝
“本歌取り。日本文芸に古来の技法だ。地口、といえば江戸戯作風で、パロディといえば近代文学風で。これもこの句集の、もう一つの特徴ですね”。
ここでの本歌は、
白泉「戦争が廊下の奥に立っていた」
芭蕉「行く春を近江の人と惜しみける」
など。
“これを剽窃とみる向きもありましょう。”とも述べています。出来映えは本書で。
最後に、春の部からこの時期にふさわしい(?)句を三つ。
万力を外されて今朝卒業す
俎(まないた)や二二んが四月やって来る
不穏なり春パンダらの箱開けて
あとは娑婆に出ていくだけです。
(M)