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Whose book? 2009-09-07

久しぶりに貸出カウンターの担当になり、以前と比べて目立って感じられることがいくつかある。やはりまずは貸出冊数の増加。1990年代に10万台の前半から半ばであった貸出冊数が、2000年の自動貸出機導入などにより10万台後半から20万ほどにまで伸びている。次に、貸出中図書への予約件数の飛躍的な増加とカウンターの予約棚で貸出者を待っている予約本の倍増。理由はOPACから予約が簡単に出来るようになったことであろう。

そして残念なことに、貸出された本が図書館に返却された時点で変わり果てた姿になっていることが以前より多くなっている。それには以下のようなバリエーションがあり、おおよそ先頭の数字が小さいほど頻発している。

  1. 書き込み(下線、メモ書き)のあるもの
  2. 付箋(ポストイット)付き
  3. ページ隅の折り込みのあるもの(いわゆるdog ear)
  4. 雨や水分によるページの波打ち
  5. 汚損
  6. 雑誌記事の切り取り

書き込みについては図書館のQ &Aで過去に何度も投書やご意見をいただいている。「読みづらい、読むのに時間がかかる、内容の理解に影響を与える」という苦情である。次に利用する人の学習意欲をそぐのは罪な行為ではないだろうか。図書館に返却された時点で図書館スタッフがチェックをして鉛筆で書かれたものは消しゴムで消しているが、ボールペンや蛍光マーカーが使用されたものが再購入不可の場合には、そのままの状態で書架にて次の利用者を待つことになる。

図書館の本への書き込みは、教科書や参考書などにマーカー類で印をつけることを推奨した受験教育の弊害ではないかという同僚もいる。最近他大学から借り受けた図書にも下線などの書き込みやページ角の折り込みがあったが、ICUと同様に学生が勉強熱心と評判の大学の所蔵本であった。公共図書館の本にはあまり見ないなと思っていたらそうとも言えないらしく、公共物である図書館本への書き込みはモラルの低下という意味で社会問題でもあるようだ。平成18年に横浜市立図書館で開催された「特別展示 本が泣いています」についての情報をご覧いただきたい。被害にあった図書館資料や図書館員による修理の様子が興味深い(2013年3月21日追記:該当URLは削除されています)

ICU図書館に公共図書館の本や利用者の私物本が間違って返却されることや、公共図書館へのICU本の誤返却もよくあることから考えると、利用者の手元でそれらの本が混同されているのかもしれない。かく言う私も、公共図書館にICU図書館の本を返却してしまったことがある。同じテーマの本を複数の図書館から借りる場合には特に注意が必要だ。私物と公共物は扱いを区別しなくてはならない。返却する前に今一度、どこに返すべき本なのか、間違って書き込みをしてはいないか、ポストイットの取り忘れがないか、栞がわりに使ったはがきや写真などの私物をはさんだままにしていないかを確認してみてほしい。

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