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コースマネジメントツール (2003年8月1日)

有明の東京ビッグサイトで行われたe-Leraning Worlds 2003 へ行ってきた。100以上の企業が最先端の電子学習用システムを誇らしげに宣伝する講演会・展示会だ。教育用教材から3択問題テストまでを簡単に自動作成できるソフトや講師の動きを追うビデオカメラまで様々な商品を見ることができた。

中でもBlackboard社のシステムは、大学の学習環境を一元的にサポートするシステムで、クラス情報・シラバス・教材・教員情報・教員研究情報・教員-学生コミュニケーション・成績表・カレンダ・大学情報・emailなどの機能を学生一人一人にカスタマイズした形で提供できる非常に優れたシステムだ。さらに多言語対応・統計機能など随所に亘り考え抜かれている。

また、この会社の賢明なところは教材ほかのコンテンツには一切関与していない事だ。他の社のブースでは盛んに「教材づくりがこんなに簡単にできます」みたいなデモンストレーションをしていたが、どんなに「簡単」であっても全ての教員がそのようにサクサクとウェブ教材を作るとはとても思えない。現状ではせいぜいWordかPowerpoint書類を載せるだけだろう。そこのところがよく分っている。フラッシュを使ったHP教材を作れる教員は元からそんなシステムがなくったって作れるのである。

Blackboardなどのシステムを導入した大学が、全てうまくいっているわけではないだろう。「無理矢理デジタル化することにそれほどの意味と必然性を感じない」という伝統的な教員には、これらの技術はなかなか浸透していかない。どんなに簡単で高度なシステムも使われなければタダの玩具だ。口八丁な業者に踊らされて、高い買い物をしてしまった大学も多いのではないか。

しかし、先端技術も冷静に見極めれば本当に必要・便利なものとそうでないものがある事が分る。デジタル技術の本当のメリットとは何かを考えれば答えは自ずと見えてくるのではないだろうか。まず「時間の節約および時間的制約の超越」そして「物理的・空間的制約の超越」 いろいろなメリットは終局的にこの二つに収斂していくと思われる。したがって、教材作りに今まで以上に時間がかかるようでは意味がないし、できあがったデジタル教材を教室まで見に来てもらう事にはあまり意味がない。これらのメリット・ディメリットを無視して「デジタル技術で何でもできる」、逆に「デジタル技術なんか必要ない」という両極端に走ることが一番してはいけないことだ。

今現在、インターネットを導入していない大学は(もしそんな大学があれば)早晩消え去る運命にあるだろう。問題はそれをどう生かしているかだ。ICUでは学生一人一人が自分の大学HPを持っていない。大学の発信する情報もデザイン良く提供されているとは言えない。事務部門では未だに大量の事務的お知らせが印刷物で回覧される。『研究要覧』は印刷体でしか発行されていないので、教員の研究情報は外部から詳しく分らない。ウェブに載せる情報とその発信方針や全体デザインについての責任部署を明確にしない限り、Blackboardのような全学システムの導入は難しいだろう。

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