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さて、9月です。モーショにゴーウ、大変でしたね。でも、なんとなく慣れっこになってしまったようでもあります。 「異常も、日々続くと、正常になる。(「戦場のメリー・クリスマス」)」 とは、(株)宣伝会議が2011年に出した『日本のコピーベスト500』の中のひとつ。この本は、日本を代表するコピーライター、CMプランナー、クリエイティブディレクター10名が選者を担当して、 「第一回投票で500点を選出し、その中から得票数にしたがってベスト100を決定しました。さらに、票が拮抗していた上位33点のコピーから決選投票。ベスト10を決定。……まずは戦後六十余年の「日本のコピーベスト」です」。 書名がエンボス加工してあるので、パッと見には、お日様に尻尾が生えた日の丸の旗をタテに置いたように見えます。
「ベスト10」は決選投票により決定した順位で掲載、「ベスト100」は「ベスト10」を除いた90本を順位づけせず年代順に、「ベスト500」は「ベスト10」と「ベスト100」を除いた400本を、やはり年代順に掲載している。
以下は『日本のコピーベスト500』から拾った、夏にまつわるコピーについての、オーイシくんとセイカさんのおしゃべりです。(二人の名前は、ベスト1に選ばれたコピーにちなんでいます)
オ 夏といえばやっぱり、「金鳥の夏 日本の夏(金鳥蚊取線香)」かなあ。
セ あら、家の中でゴロゴロしてたの? 私はハワイへ行ったわよ。
オ かなわないな。「ナツコの夏(資生堂)」ならぬセイカの夏満喫だね。
セ そう、セイカの盛夏。「夏は ハタチで 止まっている。(サントリー)」んだから、「ハワイ一回、ミンク一生。(京王百貨店)」なら、ミンクよりだんぜんハワイ!
オ それで「太陽に愛されよう(資生堂)」と……。雨はなかった?
セ もうバッチリで、「高気圧ガール、はりきる。(全日空)」そのまんま。
オ まんま、ずっとビーチにいて「トースト娘が できあがる。(全日本空輸)」ってわけか。
セ ご覧のとおり。「夏ダカラ、コウナッタ。(資生堂)」。オーイシくんはずっとウチ?
オ まさか。僕だって近くのプールには行ったさ。でも、すごく混んでて。
セ ああ、「史上最低の遊園地。(豊島園)」ね。あそこは広告うまいから。
オ なにしろ「これでもか、これでもか、としまえん。(豊島園)」だもの。有名なポスター作家レイモン・サヴィニャックも「7つのプール」を描いてるぐらい。
セ 赤いスイムパンツの白熊さんが、浮かんだ氷に腰掛けているヤツと、自分のしっぽにビーチパラソルを結んだ豚さんが、サングラスをかけてビーチマットにうつ伏せになってるヤツ、見たことがある。『芸術新潮』(P/705/G32)に載ってて、どっちも可愛いかったわ。で、混んでてどうしたの?
オ うん、ウチで本読んでた。安上がりに「想像力と数百円(新潮文庫)」で「インテリげんちゃんの、夏休み。(新潮文庫)」なんてね。
セ またぁ。誰がインテリだって? 「プール冷えてます(豊島園)」をビールに置きかえて、飲んでばっかりいたんじゃない?
オ ばれたか。「他社のビールも、よく冷える。(サッポロビール)」と云うし、外では「ビール、ビールと蝉が鳴く。(キリンビール)」し……。
セ あれこれ飲み比べては、「コクがあるのに、キレがある。(アサヒビール)」って、一人で悦に入ってたんでしょ、もう、バカみたい。
オ ねえねえ、清水ミチコの「明るい日本語講座」って知ってる? おふざけCDで、日本語と英語で書いた解説が付いてるんだけど、赤ちゃんのほめ方コーナーがあるんだよ。
セ ……それで?
オ 知り合いの赤ちゃんが可愛くなかったときの言い方があってね、お母さまにそっくりね、とか、生まれたばかりってカンジ!新鮮!とか……。
セ そ・れ・で?
オ あと、シブイ!とか、野性的で苦み走ってる!とか、キレがあるのにコクがある、とか。
セ マッタクどーしょうもないわね。「明るいドリンク、カンビール。(サントリー)」が泣くわよ。どうせグデグデと高校野球なんか観てたんでしょう?
オ その通り。「みんなが勝てたら、ええのにねェ。(カゴメ)」なんて無責任な態度で、ずっとテレビ観てました。でも、「打球はラジオの方が、よく飛ぶ。(RKBラジオ)」らしい。
セ 私はあまり興味ないけど。虫明亜呂無(むしあけ・あろむ)さんが『時さえ忘れて』(グラフ社)に高校野球のこと書いてたわ。「咲くやこの花」というエッセイの終わりの方だけど、 「最後に、野球を学校教育の一環とするという説は、はやく取り消したほうがよい、と、思う。また、我が子を野球選手にして、その息子の稼ぎで生活を送ろうとする親たちは、すみやかに、地上から抹殺させるとよいと思う」 なんて。
オ ふーん。僕は、出場しているのは共学校と男子校どっちが多いんだろう、と思いながら観てた。
セ 今度は何が言いたいの?
オ エヘン。「男子校のみなさん、慰問に来ました。(集英社)」。
セ はあ? そんなことより、お腹出てない?
オ 実はそうなんだ。でも、「太るのもいいかなあ、夏は。(伊勢丹)」。
セ ダメよ、ダイエットしなきゃ。
オ 分かった。じゃあ、「ダ~イエットはあしたから」やる。
セ ダメダメ、そんな昔のCMソング。「「明日からやろう」と40回言うと、夏は終わります。(増進会出版社)」よ。今すぐ始めなさい。
オ Z会か。通信教育でダイエットできないかな。
セ あんなこと言ってる。「ナイフで切ったように 夏が終わる。(パルコ)」って知らないの?
オ 分かったよ。ボクだって、秋にはスリムになって空を見上げて「いい空は青い。(全日本空輸)」ってしみじみしたいし。
セ そうそう。谷川俊太郎さんも『日本語のカタログ』(思潮社)に、「青空は飽きがこない」と書いてます。お腹のおニクは早く片付けて、モーショとゴーウに「ありがとう、もういいよ」と言いましょう。
オ それはどこのコピー?
セ 思い付き。
(M)
おまけ:
昔、「広告の3S」と呼ばれた企業がありました。ソニーとサントリーと、西武と資生堂と。ん、これじゃ4Sか。西武も西武百貨店だったか西武パルコだったか。どーも定かでない。 今回はソニーが出てきませんでした。代わりにビール会社が入ったのは、もちろん季節のせいですが、未成年の皆さんにはゴメンなさい。
サヴィニャックはサントリービールのポスターも描いています。『芸術新潮』が特集したのは2005年6月号で、としまえんの2枚のほか、森永ミルクチョコレートのもあり。 これは男の子と女の子が大きな板チョコを一緒にかじっている絵柄で、男の子は椅子を踏み台にして女の子に並んでいる。なんだか、オーイシくんとセイカさんのようです。
ひとつ、不思議なコピーがありました。「9月19日朝刊。いいニュースだから再掲載します。(キューピーマヨネーズ)」って、いったい何だろう?